2025年10月24日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年10月24日|経済の見方と今後のマーケット展望
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世界経済とマーケットの見方

米国:AI関連の反発とイベント前の手当て

米国株は、前日に売られたモメンタム/AI関連のリバウンドが主導しました。半導体やソフトウェアの一角に買い直しが入り、電気自動車大手にも下げ渋りの動き。背景には、(1)近く発表される米国の消費者物価指数(CPI)を前にしたポジション調整、(2)首脳会談イベントに関する観測が一時的にセンチメントを持ち上げた側面があります。

エネルギー:ロシア制裁強化と原油の供給懸念

米政府による対ロシア制裁強化が伝わり、原油は供給不安で大幅高の局面。エネルギー株には追い風となる一方、物価の二次波及への警戒もわずかに再燃しました。ただし、中期でみると「供給超過」見通しを根拠に、原油は上がりにくいとの見方が専門家から示されました。エネルギー価格が落ち着けば、インフレ期待と米長期金利の低下圧力、そしてドル円の円高バイアスにつながりやすい——この相関整理は当面の為替・金利・株式の三市場連動を読むうえで重要です。

年末商戦:消費は「二極化」でも総量は底堅い公算

専門家の解説では、今年の年末商戦の売上見通しは前年比プラス幅の鈍化を予想しつつも、消費意欲自体はなお堅調との評価。インフレへの警戒が根強く、所得階層での支出増減に差が続く一方、ホリデー行事への参加意欲と購買意欲は高止まりしており、株式市場の下支え要因となり得ます。


特集:AIブームが突きつける「資源制約」

AI需要の爆発は、データセンターを起点に電力・水・素材(特に銅)への構造的な需要増を招いています。

  • 電力:データセンターの電力消費増が続き、地域によっては電気料金の上昇要因に。再エネ・自家発電の導入は広がるも、天然ガス火力への依存も残り、温暖化対策とのトレードオフが露呈。
  • :送配電網強化、半導体・設備投資で需要が増勢。輸入関税の負担や国内供給制約がコスト押し上げ要因となり、建設・住居費にも波及しやすい。リサイクル強化や産地多角化が中長期の焦点。
  • :データセンター冷却での水需要が問題視。水資源の乏しい地域に集積するケースが課題で、使用量の開示義務化や再利用技術の導入が急務。ただ、再生プロセス自体が電力多消費で、万能薬ではありません。
  • 配置転換の議論:寒冷地・再エネ豊富地域への集約、ひいては「宇宙DC」構想まで、アイデアはあるものの、実装にはコスト・リスク・制度整備が立ちはだかります。
    結論としては、AI投資は「計画性」と「外部不経済の内部化」が鍵。拙速よりも、開示・規律・インフラの三点セットで成長の質を高めることが、最終的な社会受容性と投資リターンの両立に不可欠です。

経済指標:景気の現在地と金融政策の含意

米国:住宅と物価

  • 中古住宅販売は持ち直し。住宅ローン金利の低下や在庫増が追い風。ただ、長い目ではコロナ前水準をなお下回り、価格の粘着性が需要の頭を抑える構図は続きます。民間統計や景況感指数(NAHB)では先行きに明るさも見え、利下げ局面の本格化がローン金利を押し下げれば、住宅市場の底入れが確認されやすいシナリオ。
  • CPI:前回の落ち着きに続き、足元のPPIのボラティリティも沈静化。市場の関心は次回FOMCに向かい、利下げの織り込みが株式の流動性相場を支える構図が続いています。

日本:インフレの「減速」は続くが、2%割れは微妙

日次高頻度データでは夏をピークに伸び率が鈍化。総じて食品の寄与鈍化が見込まれます。ただし、年明けにかけて2%割れを明確に描けるかは不透明で、専門家は見通しの上方修正余地を指摘。経済・物価の組み合わせ次第で、金融政策の正常化(利上げ)を検討可能な環境が徐々に整いつつあるとの見立てです。


企業:決算・資本政策・業界再編の焦点

ハイテク/輸送

  • インテル:PC向け回復とコスト削減が寄与し、売上・EPSともに市場予想を上振れ。需要回復継続の見通しを示し、時間外で株価が大幅高となる場面。経営再建は官民の出資や外部との連携が進み、供給能力の再構築がテーマ。
  • アメリカン航空:売上は前年並みながら高単価座席の堅調で損失は想定より小幅。通期ガイダンスは上方修正し、最終赤字シナリオを後退。レジャーとプレミアム需要の二極構造が示唆されます。

新興テック

  • 量子コンピューター銘柄:政府出資観測報道で急騰後、当局が協議を否定し上げ幅縮小。政策テーマの「思惑と訂正」の往来が引き続き価格変動要因に。

欧州の宇宙産業再編

  • エアバス×レオナルド×タレスが宇宙事業を統合する計画を発表。欧州勢がスケールと資本効率を高め、米系の民間宇宙大手に対抗する布陣を狙います。安定受注と商用需要の組み合わせで、衛星通信・観測・防衛の一体運用を志向。

日本企業の中間決算シーズン:製造業に「見直し」機運

  • 見直しの根拠:①関税率・発動時期の不確実性が後退し価格転嫁交渉が進みやすい、②足元の為替前提が企業計画より円安方向に修正され、外需系に追い風、③半導体・電子部品のサイクル回復期待。
  • ただし注意:2月期銘柄の決算では上方・下方修正が拮抗し、3月期も「修正ラッシュ一色」とは言い切れないとの市場見方。とりわけ**素材(鉄鋼・石油化学)**は、(a)中国の輸出攻勢による価格競争、(b)原料価格の軟調が販売価格に波及、(c)新たなIT需要の直接恩恵が薄い、などで業績不透明感が残ります。
  • 自動車:各社で関税前提の置き方に差があったため、見通しの「再均衡」とコスト削減の上積み、値上げの浸透度が注目点。為替前提の見直し余地も評価の分かれ目に。

賃上げ・労働:連合「5%以上」目標継続と制度提案

連合は2026年春闘でも賃上げ率5%以上を掲げる方針。過去3年の名目賃上げの成果にもかかわらず、実質賃金はなお水準回復途上という現実を踏まえ、研究者チームが次の三つを提言しました。

  1. 先行き物価を基準に:過去のインフレ実績ではなく、向こう1~2年の見通しを賃上げ要求のベースに。ベンチマークとしては日銀目標2%を起点に上下調整する設計が現実的。
  2. キャッチアップ条項:突発要因でインフレが想定超過となり実質賃金が目減りした場合、翌年交渉で差額を埋める権利を明文化。
  3. 人手不足プレミアムの数式化:労働需給の逼迫度(人手不足)を、賃上げ要求に「定量反映」するルールを導入。試算では最低でも年1%程度の実質上乗せを数年継続する必要があるとの見立てで、28年ごろに21年水準への回復を狙うロードマップが示されました。

これらは、賃上げを「一過性」から「制度」に進化させる試みであり、家計の購買力回復と内需の安定に資する可能性があります。


日本株:政策期待と実行力の綱引き

新政権の経済対策(ガソリン税暫定税率の速やかな廃止、危機管理投資と成長投資の加速など)が**「変化への期待」**を呼び、海外マネー流入を促すシナリオが語られています。過去の構造改革期(小泉・アベノミクス)と同様、政策のスピードと実行力が鍵。

  • 強気シナリオ:補正予算・税制・規制改革が年末~来年にかけてテンポよく前進し、外人投資家の日本エクスポージャーが積み上がる。
  • 警戒シナリオ:流動性相場の巻き戻し(米金融の変化)、政策実行の遅れ、地政学や貿易摩擦の再燃が、割高許容の逆回転を誘発。

足元は決算の「質」と政策の「速度」を同時に見極める局面で、指数の大台到達を巡る期待と慎重姿勢が併存しています。


投資家のチェックリスト(今後1~2週間)

  • 日米のCPI:日本は食品主導の鈍化継続か、2%レンジの帰趨。米国はコアの粘着度合いと住居費の寄与。
  • FOMC・日銀政策決定会合:利下げの段取り・バランスシート方針、日銀のフォワードガイダンス。
  • 日本の中間決算本格化:製造業の上方修正/慎重化の分岐、為替前提の見直し、価格転嫁の進捗。
  • エネルギー動向:制裁・中東情勢・OPECプラスの供給計画。原油と金利・為替の相関に注意。
  • AIインフラ投資と資源価格:電力・銅・水のボトルネック、サプライチェーン再構築の進展。
  • 外交イベント:主要国の首脳会談のアジェンダ(通商・安全保障・テクノロジー)と波及。

まとめ:今日の実務ポイント

  • インフレ/金利/為替の三角関係を常に更新。原油の方向感がヒント。
  • 消費の二極化は続くが、年末商戦は総量として底堅い可能性。小売・物流はミックスの差が勝負。
  • 中間決算は「見直し」と「選別」:製造業の回復期待と素材の警戒を同居させるポート。為替前提・関税感応度・価格転嫁力を精査。
  • 賃上げは制度へ:先行き物価基準・キャッチアップ条項・人手不足プレミアムの三点セットは、内需株の持続力評価に直結。
  • AIの外部コストを織り込む:電力・水・銅の制約を踏まえ、設備投資計画とESGの整合性、地域規制の動向をモニター。

以上、10月24日(金)の主要テーマを俯瞰しました。

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