2025年10月15日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年10月15日|経済の見方と今後のマーケット展望

米国金融政策の行方と米中摩擦の再燃が、為替・株式・商品と広範な市場心理を左右しています。パウエル議長は「数カ月内に量的引き締め(バランスシート縮小)を停止する可能性」を示唆し、同時に雇用面の下振れリスクに言及しました。これは利下げ継続を後押しする一方、景気減速への警戒が残るという複雑なメッセージです。加えて、造船・港湾分野を軸に米中の対抗措置が重なり、半導体など成長株に調整圧力が波及しています。


1. 現在の経済の見方と今後のマーケット展望

米国:緩和継続の思惑と“雇用リスク”の両にらみ
パウエル議長は、9月の利下げ後も「経済見通しは大きく変わらず」としつつ、労働市場の弱含みに警戒を示しました。量的引き締め停止の示唆は金融環境を緩め、金利・ドル金利の先行きに下押し圧力をかけますが、同時に雇用悪化の火種はリスク資産のバリュエーションを抑える要因になり得ます。IIF討論でのFRB要人からは「年内あと2回の利下げ見通し」という発言も出ており、金利低下→投資回復という循環が意識される局面です。

米中:造船・港湾・クレーンまで広がる摩擦再燃
中国が韓国大手の米子会社に制裁、米中双方が新たな港湾料を導入——造船周辺での応酬が報じられました。港湾クレーンへの追加関税やレアアース規制の強化なども重なり、サプライチェーンの摩擦コスト増が世界の設備投資・貿易フローの重石となる懸念が再び台頭しています。市場は近くの米中首脳会談をにらみつつも、短期的には成長株や対中エクスポージャーの高いセクターにボラティリティが及びやすい地合いです。

為替:円相場は「政策・介入・金利」の三つ巴
専門家は、与党構図の不透明さと「高市トレード」の行方を材料に、151〜153円のレンジ観を提示。政府・日銀による円買い介入は、かつての152円水準は通過済みで、160〜162円近辺が警戒ゾーン、との見立ても紹介されました。政策期待の再加速と介入警戒がせめぎ合うなか、金利と物価動向がカギを握ります。

日本株:調整=中期の拾い場、外需シクリカルに妙味
株式では「国内政局の不透明感」をノイズとしつつ、米国の利下げ効果が今後の設備投資を押し上げ、日本企業の2026年度業績にプラスに効くとの見方。調整局面では電気機器、輸送用機器、機械など外需シクリカルの押し目拾いを勧める声が出ています。

中期テーマ:各国で膨張する政府債務への“覚悟”
専門家の解説では、主要国で政府債務対GDP比が右肩上がりとなるIMF見通しを踏まえ、政治的不安定と債務膨張が将来の格付け・長期金利上昇リスクにつながり得る点を指摘。日本は27〜28年ごろいったん改善が見込まれるが、その後の発散リスクも視野に、景気が比較的良好な局面での財政健全化の必要性が強調されました。


2. 特集ニュースの要点(暗号資産と銀行の境界)

IMFは、ステーブルコインなど暗号資産市場の規模が過去6年で70倍超に拡大したと指摘し、金融システムへのリスクを警告しました。米最大手の暗号資産取引所コインベースは10月3日にOCCへ「国家信託会社」認可を申請。預金・融資は扱えない一方、全米で資産管理や決済を担える“預金を扱わない全国版金融免許”に近い位置づけで、実務領域は銀行に接近します。

一方、今年4月成立のステーブルコイン関連法(番組内の呼称)では発行体の利払いが禁じられており、制度上は銀行との住み分けを図る設計です。それでも、取引所側が暗号資産保有者に「リワード(実質利回り)」を付与する運用には銀行業界が反発。財務省試算では、もしステーブルコインに利息が付くなら銀行預金から最大6.6兆ドル流出し得るとの見方も示されました。コインベースは「決済効率化が目的で、預金代替ではない」としており、**“銀行を置き換えるのか、共存するのか”**が次の焦点です。


3. 経済指標と市場の受け止め

米ベージュブック・CPIの位置づけ
米景気は転換点との見立て。地域・階層ごとの差が出やすい局面で、ベージュブックは局地的な弱さの捕捉に有効とされました。なお、米CPI(本来10月15日予定)は政府機関閉鎖の影響で24日に延期。金利・為替・外需セクターの見通しに直結するイベントが今後にずれ込み、警戒と期待が交錯します。

エネルギー・貴金属
IEAは来年の世界の石油供給過剰を見込み、原油は軟化。一方、金は最高値更新が続き、安全資産選好の強さを示しました。地政学・米中摩擦・景気減速観測と、金の強材料が重なっています。


4. 企業の決算・業績トピック整理

米金融大手
・JPモルガン:7–9月期のトレーディング収入が過去最高。総収入+8%、純利益+11%と増収増益。投資銀行も好調。
・シティ/ウェルズ:好調な業績を背景に株価は堅調、ウェルズは中期利益目標を上方修正。ゴールドマンはM&A助言がけん引。
市場は一様に持ち上げず、与信費用(貸倒引当金)増加に敏感。クレジットのクオリティやM&A/IPOの回復度合いが今後のカタリストです。

半導体・AIインフラ
AMDは先端GPU「MI450」をオラクルのAIデータセンターに供給。来年7–9月期に5万個を納入し、以降拡大予定。データセンター売上で先行する競合を追走する大型案件で、AI需要の裾野拡大を印象づけます。一方、競争激化観測はハイベータ株の変動要因に。

自動車・EV戦略
GMはEV戦略見直しに伴い7–9月期に約16億ドルの費用計上へ。米政府の購入支援終了で販売減速を見込み、将来的な追加費用の可能性にも言及。EV普及の政策ドリブン性とコスト構造の硬直性が業績変動のカギであることを示しました。

国内流通
イオンの3–8月期は2年ぶり増益。営業収益は中間期として5年連続の最高更新。物価高下での節約志向を背景にPB「トップバリュ」が牽引しました。生活防衛ニーズの取り込みが利益回復に寄与しています。


5. 投資家視点の整理(実務ポイント)

  • 米金利低下バイアス × 雇用リスク:緩和的メッセージが資産価格を支える一方、雇用に陰りならディフェンシブの相対優位が再浮上。イベントはベージュブックとCPI延期(10/24)。
  • 米中摩擦の“実需ルート”:造船・港湾・クレーンなどインフラ直撃は物流コストに波及しやすい。サプライチェーンとキャップEXの前提見直しに注意。
  • 日本株の“調整は拾う”戦略:外需シクリカルに中期妙味。為替は介入リスクと政策期待が綱引き。
  • 暗号資産と銀行の境界管理:ステーブルコインの制度設計と報酬スキームに規制論点が集中。金融仲介機能の再分配が進む場合、マネーの流れと国債需給(安全資産の買い手としての位置づけ)に注目。
  • 債務膨張リスクの再評価:格下げ・長期金利上昇が現実味を帯びる前の“余裕ある時期”に、財政・成長戦略の実効性を見極めたい。

まとめ

本日は、(1)FRBの緩和的示唆と雇用リスク、(2)造船・港湾を軸にした米中摩擦再燃、(3)暗号資産の制度境界という金融構造論、(4)米銀・半導体・EV・国内流通の個別材料が主要論点でした。総じて、金利低下の恩恵と地政・規制リスクの綱引きという相場観が続きます。短期はイベント待ちで騰落が揺れやすい一方、中期では外需シクリカルの押し目キャッシュフローの確かなディフェンシブAIインフラの競争優位の三本柱で、分散と時間分散を意識した対応が有効と考えます。

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