2025年9月29日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年9月29日|経済の見方と今後のマーケット展望

米国のインフレ指標やFRB要人発言、日本では日銀短観と上田総裁会見、さらに週末の自民党総裁選が重なる1週間。世界景気の減速懸念と政策期待がせめぎ合うなか、為替・金利・株式の方向感はデータ次第で揺れやすい局面にあります。本稿では、足もとの経済認識、今後の市場展望、特集テーマ(中国の「反内巻き」政策)、今週の主な指標、企業トピックなどを整理します。


目次

1) 現在の経済の見方:米PCEとFRBのスタンス

米8月PCE(個人消費支出物価指数)は総合が前年同月比2.7%上昇と予想一致。サービス価格のわずかな加速に対し、コアは2.9%で前月並みと、ディスインフレの足取りは緩慢ながら大きなサプライズはありませんでした。追加利下げ期待の再燃が株式の反発材料になった一方、目標2%にはなお上振れという評価です。

FRBは今月、9か月ぶりに利下げを再開。リッチモンド連銀・バーキン総裁は「インフレと雇用が同時に大幅悪化するリスクは限定的」と述べ、雇用については移民減少などで供給制約が強まるなかでも失業率が安定している点を強調しました。足元の雇用者数増加は3か月平均で+2.9万人と鈍いですが、「必要とされる雇用者数の増加幅自体が小さくなっている」との見方を示し、かつての“月8~10万人が目安”から「いまは0~5万人程度でも良好」との含意を語っています。

為替面では、関税政策不透明感やドル覇権への不安を背景に“ドル離れ”が続いた経緯があり、足元も資産運用者の先物ポジションではユーロ・円ともにドル売りヘッジ継続がうかがえます。短期筋の円ショートが円安圧力となる一方、全体観としては「緩やかなドル安」を想定する声が優勢です。


2) 今後のマーケット展望(為替・金利・株式)

為替(ドル/円)
今後は米利下げ・日利上げの組み合わせでヘッジコストが低下し、機関投資家の新規ヘッジ導入が入りやすい環境。加えて総裁選後のレバレッジドファンドの円買い戻しも想定され、ドル円は「ゆっくり145円を目指す」シナリオが提示されています。週初は指標空白と月末・四半期末要因で方向感に乏しい展開ながら、一方向へのブレにも注意が必要です。

金利
国内10年金利はやや上昇基調。物価のノルム転換確認を急がず、データ見極めを重視する日銀のなかで、タカ派提案(利上げ)に対し多数は据え置き支持という構図。今週の短観結果が金利観を左右する材料になります。

株式
米PCEが織り込み線上で、米株高を受けて日本株も買い先行の公算。ただ、週後半の米雇用統計と総裁選を前に“高値圏のもみ合い”がメインシナリオ。政策観測に応じて物色テーマが変化しやすく、テーマの見極めが重要です。


3) 特集ニュースの要点:「反内巻き」政策で逆風が強まる中国

専門家の解説によれば、中国は過剰設備を抱えるEV・太陽光パネルなどで“採算度外視の値引き競争=内巻き”が広がり、当局は今年7月から本格的に生産・投資の抑制に舵を切りました。製造業投資の鈍化が目立ち、PPIの長期マイナスが経済構造悪化のサインとの指摘も。耐久財買い替え支援策の反動で消費も急速鈍化し、外需は対米関税引き上げと迂回輸出のけん制で先行き難調。上期は“政策・駆け込みの追い風”が多かった一方、下期は向かい風が増えるとの見立てです。

成長率は、上期の勢い(GDP+5%超)から下期は4%前後に鈍化し、通年では4.7%程度との試算。短期金利低下や不動産不振に伴うマネーの株式流入が株高を支えているものの、今後の景気悪化→追加緩和→過度な株高→引き締めによる調整、といった振れのリスクにも注意が促されました。


4) 今週の主な経済指標・イベントと着眼点

  • 9/29(月):ソニーフィナンシャルグループが東証プライムに再上場(パーシャル・スピンオフ)。需給の歪みとバリュエーションに注目。
  • 10/1(水):日銀短観(関税政策の変化が製造業、特に中小に与える影響、そして来年の賃上げ余力が焦点)。
  • 10/2(木):ユーロ圏8月失業率、米新規失業保険申請件数。
  • 週内:上田総裁が経団体懇談会後に会見。早期利上げ観測が株・為替に影響しうるため発言トーンを注視。
  • 10/4(土):自民党新総裁選出。相場テーマの入れ替わり(規制・成長戦略・財政方針)と、短期のイベントドリブンフローに注意。

5) 発表のあった経済指標と市場の受け止め

米PCEは「予想線上・コア粘着」の評価。利下げの継続余地を示唆しつつも、物価目標超の状態は続いており、FRBは“過度に急がない”バランスを模索。雇用はヘッドライン悪化に比し失業率が安定しており、供給側(移民・参加率)の変化が読みづらさを増しています。市場は今週の米雇用統計を通じて“ソフトパッチか、より深い減速か”を再確認するフェーズです。

国内では、短観で関税変化の影響賃上げの持続性が注目点。とりわけ製造業・中小の先行き判断が、日銀のデータ重視スタンスに具体性を与える可能性があります。


6) 企業トピック:パーシャル・スピンオフ再上場の示唆(ソニーフィナンシャル)

今回の上場は「親会社株主に子会社株を割り当てる」国内初のパーシャル・スピンオフ。指数採用外れによる機械的売り需要が想定される一方、1,000億円の自社株買いで吸収余地も。バリュエーションは生命保険セクターやネット専業銀行との比較で割安感が指摘され、構成(生命・損保・銀行)の収益基盤とブランド力が評価点。短期は受給要因の変動に注意しつつ、中期は「低P/E×成長性×ブランド」の見直し余地が焦点です。


7) 調査・政治動向:総裁選と市場心理

世論調査では、次期総裁として高市氏が34%でトップ、次いで小泉氏25%。政策優先度では消費税減税が最も多く、社会保険料引き下げガソリン暫定税率廃止が並ぶ結果。市場参加者アンケートでは、短期の株高期待は高市氏中長期の成長期待は林氏に票が割れるなど、政策トーンの差を織り込む視線がうかがえます。


8) 企業戦略のヒント:アップルの日本重視とヘルスケア強化

ティム・クックCEOは、日本市場を「シンビオティック(相利的)」と表現。新型iPhoneやApple Watch、AirPodsの健康機能強化(血圧リスク・睡眠・心拍など)を語り、ハード×ソフト×ヘルスデータの統合で付加価値を高める方針が示されました。国内のヘルステック、保険×ウェアラブル連携など“健康×データ”領域は波及効果が大きいテーマです。


9) グローバル・アウトルック:農業、財政、ガバナンス

  • 農業:10年後に担い手がいない農地が多い都道府県が目立つとの調査。生産性向上へはデジタル・人材投資・企業参入の規制改革が鍵。供給制約は国内物価や成長の制約でもあり、中長期の政策テーマです。
  • 財政:フランスのデモにみる“少数与党下の財政再建の難しさ”。SNS時代は極端な情報が増幅しやすく、 unpopular政策の実行コストが上昇。市場は財政一体改革の実効性に敏感です。
  • 女性役員:プライム企業の女性役員比率は目標に接近も、その多くが社外。意思決定の多様化には社内役員比率の底上げが不可欠という視点。人的資本の実質強化が評価の分かれ目になります。

10) 新興国ウォッチ:ベトナムに広がる日本のサービス業

ベトナムは若年人口比率が高く、個人消費の伸びを背景に日本のサービス業進出が拡大。飲食・医療・宿泊・美容・学習塾など裾野が広がり、現地売上は十数年で約3倍規模に。新日的土壌や比較的緩やかな投資規制も追い風で、2030年代後半まで続く人口ボーナスを取り込む長期戦略が奏功しやすい局面です。


まとめ:今週の戦略ポイント

  1. 米雇用統計の“質”を重視:雇用者数だけでなく失業率・参加率など供給側も併せて判断。FRBは“急がない利下げ”を模索。
  2. ドル安ヘッジの持続とドル/円:ヘッジコスト低下見込みと円買い戻しで、145円方向の“緩やかな円高シナリオ”。裁量の売買よりイベント前のポジション管理を優先。
  3. 中国の政策転換の余波:内需・外需ともに向かい風。素材・装置産業の過剰能力調整はサプライチェーンに波及しやすく、周辺アジア需要にも注意。
  4. 国内は短観と総裁選:製造業・中小の景況感と賃上げ余力の“地の足”を確認。政策トーンの変化が相場テーマを動かす可能性。
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