2025年9月24日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年9月24日|経済の見方と今後のマーケット展望

1) いまの経済の見方と今後のマーケット展望

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「リスクフリーな道筋はない」と述べ、今後の利下げはデータ次第で慎重に判断する姿勢を改めて示した。来月の会合での即時利下げには言及せず、「緩めすぎリスク」と「引き締め過ぎリスク」の両にらみを続ける構えだ。対してボーマン副議長は、雇用悪化対応の遅れリスクを指摘し、利下げ継続に前向きなトーン。政策委員の間でもスタンスの濃淡が意識され、市場は「ソフトランディングは維持しつつも過度な緩和期待は戒める」局面にある。

株式市場では、最高値付近まで買い進まれたハイテク主導の上昇が一服。背景には「新味に乏しい」パウエル発言と過熱感の警戒がある。短期的には押し目を探る動きが期待される一方、利下げペース・到達点の「見解のズレ」が残る限り、イベント前後にボラティリティは高まりやすい。

過去の利下げ局面のリターン統計も示唆的だ。1980年代以降、据え置き長期化の後に利下げへ転じた8回のうち、4回は景気後退入りで株が軟調、残り4回は6か月でS&P500が中央値+8%、12か月で+15%というパターン。結局は「景気が持つかどうか」がカギで、景気後退を回避できるかの見極めが当面の焦点となる。


2) 特集トピックの要点:国連総会とウクライナ情勢

米ニューヨークの国連総会に合わせ、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談。欧州に対し、ロシア産エネルギー(原油・ガス)の購入抑制を働きかける点などで協議した。EUはすでにLNGの対ロ輸入禁止(来年末まで)提案を加盟国に示しており、議論は「LNGに加え原油まで圧力を広げるか」が焦点に。停戦後の安全保障枠組みも議題に上ったとみられる。

同氏はSNSで「欧州の財政支援があれば、ウクライナが本来の領土を取り戻すことは選択肢」と投稿。これまで強調されてきた「即時停戦優先」から、領土回復の可能性に言及する含みへとトーンが変化したとの受け止めもある。

また、同氏の一般討論演説は国連や国際協調への批判に比重。パレスチナ国家承認の動き(英仏など)に反対し、イスラエル擁護を鮮明化。ロシア・ウクライナ停戦を巡っては、中国・インドのロシア産エネルギー輸入をやり玉に挙げ、欧州にも購入停止を迫った。気候変動対策については「史上最大の詐欺」と切り捨てるなど、国際協調からの距離感が市場心理に与える影響も無視できない。


3) 経済指標とマーケットの受け止め

米9月PMI(速報値)は総合で53.6と拡大基調を維持しつつも前月比で低下。製造・サービスともに節目の50は上回るが、コスト上昇を背景に企業の価格転嫁は「需要鈍化と競争激化」で難しく、マージンの頭打ちが意識される。景気は減速と底堅さの「綱引き」状態で、株式の高バリュエーションが続くほど、マクロの小さなブレが価格に大きく波及しやすい。

米4–6月期の経常赤字は前期比で大幅縮小。物の輸入減(関税の影響を含む)が赤字額を押し下げ、対GDP比も低下した。内需の粘りと外部環境の変化が混在するなか、通商・関税の政策変更は実体経済と資本フローの双方を通じて為替・リスク資産に波及するため、イベントカレンダーの確認が重要だ。


4) 企業決算のポイント

AI関連需要の裾野拡大がメモリに波及。マイクロンの6–8月期は売上+46%、純利益3.6倍と大幅増収増益。HMB(高帯域幅メモリ)などAIサーバー向けの需要が牽引し、今期ガイダンスも強気に。時間外で株価は上昇した。データセンター投資の再加速が続く限り、設備投資循環の上振れが期待される。

一方、半導体大手エヌビディアは、OpenAI向けの巨額投資計画(最大1,000億ドル規模のデータセンター構想)を明らかにした翌日に利益確定売りで反落。高バリュエーション銘柄ほど「計画の具体性」と「実行までの資金繰り・収益化タイムライン」に市場は敏感で、材料出尽くしの揺り戻しも生じやすい。


5) セクター深掘り:海運の「三つの不透明」

コロナ禍で急騰したコンテナ運賃は、北米向けを中心にパンデミック前水準へ低下。海運大手3社の株価は、直近の株式市場全体に比べ相対的に伸び悩む。背景には、①対中関税など米通商政策の帰趨(年末商戦需要・新造船供給・前倒し需要の反動)②紅海情勢を受けたスエズ回避での喜望峰迂回による輸送日数の長期化(安全回復の時期は不透明)③米国で検討される中国関連船舶への港湾コスト負担(入港料)などの政策動向—がある。いずれも運賃水準と需給を左右するため、セクター利益の「見通しにくさ」を助長している。

投資スタンスとしては、各社のキャッシュアロケーション(投資と株主還元の配分)に注目。先行き不透明の中では、短期的な株主還元比重が大きい銘柄や、方針変更の余地がある銘柄に妙味、という見方が示された。


6) 国内政治の論点と市場

与党総裁選では、物価高対応に関する減税・給付・公共料金対策などが並ぶ一方、中長期の成長戦略や社会保障改革の「踏み込み」は候補間で濃淡。財政規律と景気下支えのバランス、そして日銀の政策正常化に対するスタンスが、債券・株式・為替の評価軸になる。番組内の「専門家の解説」では、財政に前向きなスタンスは株式にはポジティブだが、債券には金利上昇圧力(=慎重材料)との整理が示された。


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まとめ:投資家が押さえるべきポイント(9/24)

  • FRBは「慎重な利下げ」へ。政策委員の見解の幅と、市場の織り込みとのズレが短期の変動要因。過去統計が示す通り、景気後退回避なら株の上昇余地は残る。
  • 国連総会での外交・エネルギー発言は、欧州の対ロ・エネルギー調達と供給網に波及し得る。停戦後の安全保障議論も含め、年末にかけて地政学は不確実性を高止まりさせる。
  • 米PMIは拡大維持も減速。価格転嫁難が示唆され、バリュエーション高止まり市場にとっては決算・ガイダンスへの目線が厳しくなる。
  • AI関連投資は半導体メモリを中心に追い風。個別材料は「規模×実行確度×収益化時期」の三点で評価が割れる。
  • 海運は政策・地政学・供給の三重不透明。運賃・需給の読みづらさが当面のバリュエーション上限。各社の現金配分方針が相対パフォーマンスを左右。
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