2025年9月19日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年9月19日|経済の見方と今後のマーケット展望

米FOMC後の相場観、注目の企業動向(NVIDIAによるインテル出資)、直近の経済指標の評価、そして日本株・為替・日銀の先行きを整理します。数字だけに依存せず、背景と波及を丁寧に補足し、今後の投資判断に役立つ論点をまとめました。

目次

1. マーケット総括:利下げ再開で「リスクオン」、半導体と景気敏感が牽引

米FOMCが年内の追加利下げ継続を示唆したことで、株式市場は広く「リスクオン」に傾き、主要指数はそろって最高値を更新。物色はAI関連やグロース(成長)に加え、建機など景気敏感へと裾野が広がりました。専門家の解説でも、イベント明けのセンチメント改善が確認され、個別ではインテルの急騰(後述)が相場全体の押し上げ材料になったとの見立てです。

中小型ではラッセル2000が約4年ぶりの高値を更新。年初に懸念された関税ショックからの回復に加え、利下げ観測や減税期待がボトムアップの支えになっています(要は、金融環境の緩み+政策期待で「金利に弱い」域のバリュエーションが再評価される構図)。


2. 特集:NVIDIAの対インテル「50億ドル」出資──業界地図の何が変わるか

取引の骨子

  • NVIDIAがインテルに50億ドル(約7,400億円)出資し、インテル株を1株23.28ドルで取得。発表後にインテル株は約22.8%上昇
  • CPU(インテル)×GPU(NVIDIA)の組み合わせで、データセンターやPC向けの半導体を共同開発へ。
  • 収益低迷のインテルは6四半期連続赤字の状況。米政府も先月89億ドルの出資を表明するなど、官民一体での再建色が濃い。

産業構造の含意

  • 設計×製造×パッケージングの再編インテルの製造基盤(先端・後工程含む)とNVIDIAの演算IP(GPU/アクセラレータ)が接続されることで、AIサーバーの**ボトルネック(供給制約・電力効率・TCO)に対する統合最適化が進む公算。ソフト/ハードの垂直連携が一段と強まれば、サプライチェーンの「国産化・分散化」**の潮流にも合致します。
  • 競争と協調の揺らぎ:NVIDIAは自社設計のCPU(Arm系)にも投資していますが、サーバー/PCという巨大なTAM(総市場規模)では協業と競争の同居が常態。両社の共同開発は、AMDやカスタムSoC陣営(クラウド、超大手プラットフォーマー)に対する牽制としても機能します。
  • 資本コストの視点:赤字下のインテルにとっては研究開発・設備投資を継続するうえで資本調達の多様化が急務。官民マネーのレイヤリング(政府補助+戦略出資)により、技術ロードマップの断絶リスクを抑え、成熟期の半導体産業に新たな資本循環を呼び込みます。

3. 専門家の解説:増える「スピンオフ」──株式市場に優しく、社債市場に厳しい?

最近、J&J、GE、フェデックス、クラフトハインツなど大企業でスピンオフ(事業分離・新会社上場)が増えています。狙いは経営資源の適正配分バリュエーション向上。株式投資家にとっては、分割先の株式が相対的に高パフォーマンスを示すケースも多く、株価押し上げ要因になり得ます。

一方、社債投資家は必ずしも恩恵を受けません。既存債は原則分割元に帰属するため、分割先の成功が債権者に及びにくいほか、投資家保護条項の修正など不利な事象が生じる場合も。極端な場合、債権者グループの対抗行動に発展します。さらに、分割先の財務基盤の脆弱性規制承認の遅延も失敗要因になりやすい。株式サイドに好材料でも、クレジット市場の反応は別である点は押さえておきたい論点です。


4. 経済指標の整理:製造業の改善と労働指標の底堅さ

  • フィラデルフィア連銀指数(9月)は+23.2と前月のマイナスから大幅改善。新規受注がプラス転化出荷は大幅上昇支払価格は低下雇用は横ばい6カ月先の見通しも改善し31.5。総じて先行きの設備投資の回復余地が示唆されます。
  • 新規失業保険申請23万1千件(前週比**▲3.3万人**)と市場予想より強く、継続受給192万人(▲0.7万人)。短期的には労働市場の急失速リスクは後退。ただし、FOMCは雇用のダウンサイドリスクに引き続き目配りしており、段階的な利下げで需給均衡の軟着陸を狙う構えです。

5. 日本株の評価:割高「すぎず」容認範囲、支えは受給と名目成長

東京市場では、日経平均が4万5千円台を初乗せ。NT倍率は14倍台で過去平均よりやや高い程度、TOPIXの1年先PERは16倍前後でレンジ(12–17倍)内との解説。足元の高めバリュエーションを正当化する3要因として、①一時的に利益が低め(関税影響で来期回復見込み)、②低金利と名目GDP成長(長期金利が約1.5%台、名目成長は約5%)、③自社株買い・M&A・TOB等による強い需給が挙げられました。受給面では年初来TOB経由の資金流入が約10兆円規模との指摘もあり、指数の下支えに。


6. 為替と日銀:本日の会合は据え置き見込み、焦点は「10月以降」の示唆

本日の日銀会合は政策金利の据え置きがメインシナリオ。焦点は上田総裁の会見で語られる利上げ再開の含みです。海外経済の減速リスク(米雇用の鈍化や通商政策の不確実性)が強調されるほど、利上げ時期の後ろ倒しにつながり、日銀要因での円高は想定しにくいという見方。短期のドル円は、日銀のトーンと自民党総裁選をめぐる世論動向にも振られやすいとの指摘です。

「専門家の解説」では、日銀がこれまで利上げを行った局面は経済・物価の上下リスクが「バランス」または上振れ優位と判断した時で、下振れリスクが勝る局面での利上げは例がないとの整理。10月の利上げはハードルがやや高い一方、来年1月は春闘の賃上げ見通しが具体化しやすく、相対的に可能性が高いとの見立ても示されました。


7. 雇用×AIの現状:若年層雇用への影響は限定的だが、先行きは選別的

米NY/NJのサービス業調査では、AI導入企業の約11%が過去半年で採用増と回答する一方、AI導入を理由とした解雇は約1%と足元の雇用影響は限定的。ただし、今後6カ月では13%が解雇、23%が採用抑制の計画と回答しており、効率化の果実を誰が得るかという選別色は強まる見込みです。職種別ではソフトウェア開発22–25歳の雇用が約2割減、一方で35–49歳は増加。経験とスキルにプレミアムが乗る二極化が鮮明です。


8. 英米の先端分野連携:投資コミットと地政の綻び

英国のスターマー首相と米国大統領の会談では、AIや量子分野の連携強化防衛の共同開発で合意し、企業投資は2,500億ポンド(約50兆円)規模との言及。一方、パレスチナ国家承認をめぐる立場の差は残り、地政の不透明要因は払拭されていません。実需に根差した技術・安全保障の接合が進むなかでも、外交面では対立と協調の縫い目が課題となります。


9. 先行きの投資スタンス(まとめ)

  • 米国:段階的利下げ+生産性テーマ(AI/省電力/クラウド最適化)で成長株と一部景気敏感の両にらみ。NVIDIA×インテルの協業示唆はサーバーTCO最適化供給制約の緩和期待を高める可能性。半導体関連は設計・製造・後工程の分業と再編の波を前提に銘柄間の相対評価が重要。
  • 日本:バリュエーションはやや高めだが許容範囲。受給(自社株買い・M&A・TOB)と名目成長>金利の環境が下支え。日銀は据え置き→スタンス見極めの段階で、10月の可能性は限定、1月は相対的に有力為替は150円近辺の上限圧力と政策・景気サプライズの綱引きに。
  • クレジット:スピンオフ増加は株式に好材料でも、社債側の契約変更・順位付けに要注意。債権者の集団行動が顕在化するケースも。イベントリスクのコベナンツ精査は不可欠。
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