2025年9月18日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年9月18日|経済の見方と今後のマーケット展望
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主要トピック整理:FOMC利下げ再開、為替と株式の見通し、AIデータセンター投資の波及、最新指標と企業動向

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日、FOMCで0.25%の利下げを決定し、6会合ぶりに緩和へ再び舵を切りました。ドットチャートは年内にさらに0.5%(2回)の追加利下げ、来年は1回を示唆。物価見通しは2.6%へ上方修正され、雇用の減速を踏まえた「予防的」な判断である一方、関税などによるインフレ再燃リスクへの警戒もにじみます。反対票はミラン新理事の1名(0.5%の大幅利下げを主張)。会見でパウエル議長は独立性の堅持を強調しました。

現在の経済の見方:雇用減速に備える「予防的利下げ」—インフレはなお警戒

今回の決定をめぐっては、「雇用の弱含み」を受けたリスクマネジメントの一環という解釈が主流です。FRBは景気後退シグナルを強くは見ておらず、成長率見通しは引き上げ。一方、インフレ見通しは上方修正され、関税の影響を含む物価の“粘り”を懸念。したがって「大幅連続利下げ」ではなく、雇用下振れに備えるための小刻みな緩和が基本線との整理が妥当です。

番組の専門家の解説でも、今回の利下げは緩和局面への大転換ではなく「予防的」色彩が濃いと指摘。25年・26年の見通しと照合しても、むしろ金融環境を大きく緩める意思は限定的で、雇用リスクの台頭に備えつつ、インフレ再燃の芽を注視する二正面作戦という評価です。


今後のマーケット展望:為替のカギは「日銀ターミナルレート」観測の上方修正

為替はFOMC後に乱高下したものの、方向感は限定的。中期的には「日銀のターミナルレート(最終到達点)」に関する市場の織り込みが円相場のレンジブレイクを誘発するとの見方が示されました。足元の市場織り込み(2年先1年金利)は約1.17%。これに対し、民間予想では2年後に政策金利1.5%程度、ターミナルがそれ以上の可能性もあるとの指摘。過去の金利差と為替の相関から試算するフェアバリューは約143円で、見通しの上方修正が進めば円高圧力が高まるシナリオです。政治日程等の不透明さからタイミングは後ずれリスクもあり、年内の要所(10月・12月)でのガイダンスが注目点となります。

株式はFOMC直後の反応が限定的。成長率上方修正とインフレ見通し上方修正という“相反”の組み合わせ、さらに年末ドットに異常値(とみられる)影響もあり方向感が鈍りました。ただし「利下げ開始決定後、翌日以降に買いが強まった昨年9月のパターン」への期待も残り、物色は循環を伴いながらイベント通過後の再評価が焦点です。


特集の要点:AIデータセンター投資の波—半導体からネットワーク機器まで恩恵

米テック大手のAIデータセンター投資が加速。メタの「ハイペリオン」計画は完成時の規模が“マンハッタン島”級との説明もあり、オープンAIは「スターゲート計画」の一環としてテキサス州で大規模DCを建設。約15兆円投じ、最大40万個のチップを収容し、来年半ば完成を目指すとされます。こうした設備投資は半導体指数(SOX)の上昇要因の一つで、GPU供給のNVIDIAに加え、ネットワーク機器・コネクタなど周辺サプライチェーンへの波及も指摘されました。投資循環は「先にネットワーク強化→GPU大量導入」という順で進むため、受益範囲は広いのが特徴です。地政学(米中対立・禁輸報道)に伴う変動リスクは要留意。


直近の主な経済指標と受け止め

  • 米8月住宅着工:年率換算130万7千戸、前月比▲8.5%。住宅着工許可も▲3.7%と軟化。モーゲージ金利の低下が進む局面でも需要は回復力に乏しく、住宅セクターの慎重さが続く印象です。
  • カナダ銀行:政策金利を**0.25%引き下げ、2.5%**に。関税・貿易を巡る不確実性を重荷と位置づけ、景気下支え姿勢を明確化。北米での段階的緩和拡大は、ドル加・北米金利連動を通じた為替・債券の変動要因となり得ます。
  • 訪日客(8月)342万8千人(前年比+16.9%)。円安と休暇需要で8月として初の300万人超え。国・地域別では韓国・中国・米国が8月として過去最高、台湾・スペインは単月過去最多。サービス消費の押し上げ要因として継続モニター。
  • 日本の貿易(8月)対米輸出▲13.8%。自動車の落ち込みが響き、全体収支は2,024億円の赤字(2カ月連続)。関税要因が日本の外需に与える影響は引き続き注視。

企業・政策関連の注目点

  • NVIDIA関連:英FT報道で中国当局が国内企業に対しNVIDIAの中国向け製品のテスト・受注停止を指示。同社CEOは失望を表明。中国製半導体の採用促進という意図が示唆され、サプライチェーン再編圧力が強まる可能性。AI投資循環の“地政学バイアス”は引き続きリスク要因です。
  • 自動運転実装の進展Lyft×Waymoがナッシュビルで自動運転タクシーを開始予定。モビリティ・AIの商用化は中長期の需要ストーリーを補強。ただし短期の株価反応は分散。

「専門家の解説」:トランプ政権 vs パウエル議長—3つの争点

  1. 大幅利下げへの政治圧力:政権側は一段の利下げを強く要求。
  2. 人事の主導権:ミラン新理事の登場など、理事会バランスの変化が今後の政策スタンスに影響し得る。
  3. FRBの機能・枠組み批判:量的緩和の副作用や格差拡大への批判が高まり、政策運営の再定義を迫る可能性。
    結論として、パウエル議長に不利な地合いが続く中、「急激な利下げ→債券・金融市場の不安定化」というテールリスクにも目配りを、との指摘です。

先行きの投資スタンス(要点)

  • 金利・為替:米は“予防的”利下げ路線、日本はターミナル見通しの見直し余地。金利差縮小・円高方向の芽が中期で台頭し得るため、為替ヘッジ方針の再確認を。
  • 株式:イベント通過後の再評価に期待しつつも、循環物色・政策不透明感に配慮。AI関連は半導体→ネットワーク→電力・建設まで裾野が広いが、米中リスクで振れやすい点に留意。
  • マクロ指標:米住宅は需要回復の足取りが鈍く、過度な景気期待は禁物。北米の段階的緩和拡大の連鎖可能性は、信用・為替を通じた波及を点検。
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