一目均衡表は、細田悟一(ペンネーム:一目山人)が1930年代に考案し、1968年に公表したテクニカル指標です【Investopedia】。
基本数値は 9・26・52で、転換線・基準線・先行スパンBの計算に用いられます。
これは当時の日本株市場(週6日営業)に基づいた周期(約1.5週・1か月・2か月)を反映したものです【Medium】。
しかし、現在の主要な株式市場は週5日営業日で、それに基づいた修正が必要と考え、調査と検証をしました。
そもそもどの時間足で有効か?
Chutaは下記のように、基本的に日足で有効なインジケータと考えています。
| 時間足 | 一目均衡表が有効か |
|---|---|
| 月足 | × |
| 週足 | △ |
| 日足 | ◎ |
| それ以下の時間足 | × |
世界各市場における実例(日足・週足)
株式市場
- 日本株・欧米株ともに標準値(9・26・52)が主流【SBI証券解説】。
- 一部の海外投資家は**「7・22・44」**を採用。これは週5日営業市場に合わせた調整【fintechee】。
- 週足でも標準値をそのまま使用(9週=約2か月、26週=半年、52週=1年)。
株式市場では基本的にデフォルトの9・26・52が広く使われています。特に日本では伝統的に日足・週足とも標準値を踏襲するのが一般的で、投資家の多くが同じチャートを見ている状況ですgaitameonline.com。これは「他の投資家も注目する指標だから機能する」というテクニカル分析の前提にも合致しますoanda.jp。
一方、欧米を中心に5営業日ベースの調整案も知られています。例えば**「7・22・44」という設定は5日週のカレンダーに合わせた代替値で、一部トレーダーに採用されていますfintokei.comchartswatcher.com。7・22・44では7日=1週間強、22日=約1か月、44日=約2か月の取引日数**となり、元の9・26・52(6日週前提)に対応する期間を5日週で再現する狙いがありますchartswatcher.com。
- 事例: 日本のフィンテック系メディアによれば、「海外トレーダーに人気の設定値7・22・44」は短期売買向きであるものの、基本的な使い方やシグナル解釈は標準設定と同じとされていますfintokei.com。焦って飛び乗らず、一目均衡表の発するシグナルを丁寧に確認することが重要だ、と注意喚起されていますfintokei.com。実際、米国株などでは7・22・44にカスタマイズする投資家もいますが、依然として9・26・52の方が主流との声も多く、コミュニティで賛否が分かれていますchartswatcher.comacademy.binance.com。
- 週足での利用: 株式の週足チャートにも一目均衡表は有効ですfu.minkabu.jp。週足でもパラメータを変えず9・26・52のまま使われることが多く、例えば日経平均やS&P500の長期トレンド分析に活用されています(週足9週=約2か月、26週=半年、52週=1年のスパン)fu.minkabu.jpfu.minkabu.jp。一部には「四半期サイクルを意識して13・26・52にすべき」といった意見もありますが、一般的ではありません。むしろ週足も含め基本数値は固定し、「期間の長短よりも 各線の意味 に注目すべき」という考え方が専門家から示されていますfu.minkabu.jp。実際、小次郎講師こと手塚宏二氏も「一目均衡表の数値は投資家が自由に変更する類ではなく、意味があるからその値になっている」と解説していますfu.minkabu.jp。
Chutaのおすすめ
私は下記の理由から(7・22・45)で使用しています。
- 転換線:7〈5営業日×1.5(小数点切り捨て)>
- 基準線:22〈転換線×3(小数点切り捨て)>
- 基準線:45〈転換線×6(小数点切り捨て)>
FX市場
- 標準値9・26・52が世界的にデファクト【DailyFX】。
- 為替は24/5市場だが、標準設定で十分に機能。
- 一部の短期トレーダーが8・22・44や9・30・60を試すが、少数派。
外国為替市場では一目均衡表が特に広範囲に使われている分野です。円相場を中心に日本のFXトレーダーに古くから愛用され、近年は海外の銀行・機関投資家のレポート等でもIchimokuチャートが登場するほど普及しています。基本的には9・26・52の標準設定が用いられ、主要取引ツール(MT4/MT5やTradingView等)のデフォルトもこの値になっていますacademy.binance.combloomberg.com。
- 24時間市場と標準値: FXは平日24時間(24/5)開かれる特殊な市場ですが、それでも標準値が「非常によく機能する」との意見がありますchartswatcher.com。理由の一つは、為替は株よりトレンドが継続しやすく、1か月程度のサイクルで押し目・戻りを形成するケースが多いためです。基準線26日がちょうど月次の市場心理を反映し、世界中のトレーダーが同じ26日線を見ていることで支持抵抗として self-fulfilling 的に機能している側面もありますoanda.jp。実際、メジャー通貨ペア(EUR/USDやUSD/JPY等)の日足では9・26・52で十分有効との報告が多く、パラメータ変更を推奨する声は少数派ですchartswatcher.com。
- 代替設定の例: とはいえ、一部には為替市場向けに微調整する動きもあります。たとえば**「8・22・44」や「9・30・60」を試すケースがありましたが、大勢には至っていません(調整幅が小さいため効果も限定的)。また短期デイトレーダーの中には、1時間足以下で5・13・26のように期間短縮して使う例もあります。しかし前述のとおり本来日足向けの指標であり、短すぎる設定はノイズが増えるため、あくまで上級者向けの応用でしょう。gaitame.com(※本記事のスコープ外ですが、参考:一目均衡表は5分足や1時間足でも応用可能**で、多くのデイトレーダーが活用していますfu.minkabu.jp。ただし基本数値はそのまま用いることが多く、安易なパラメータ変更は推奨されませんfu.minkabu.jp。)
- 週足での利用: 為替でも週足チャートに一目均衡表を重ね、長期トレンド確認に使われます。こちらも値は9・26・52のままが基本ですfu.minkabu.jp。例えばドル円の週足で価格が雲の上にあり遅行スパンも上向きなら、中長期的な上昇トレンドと判断する、といった具合です。週足で9・26・52を使うと、基準線=26週(半年)が長期トレンドの軸として機能し、52週(1年)の先行スパン2が年単位の支持帯として意識されます。為替市場では経済・金融イベントの周期が四半期〜半年で巡ることも多いため、週足一目のシグナルは投資家心理の大局を捉えるのに有用です。
暗号資産市場
- 特殊な24/7市場のため調整派が多い。
- 10・30・60:週7日稼働に合わせた調整【CoinMarketCap】
- 20・60・120:騙し回避のため長期化【Binance Academy】
- ただし標準9・26・52派も根強く、「他の投資家が見る線が効く」という考え方も多い。
暗号資産(仮想通貨)の市場は土日含め365日24時間(24/7)動いており、従来の株・FXとは取引リズムが異なります。このため、一目均衡表の期間設定についてもクリプト専用の調整が検討されてきました。特にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など主要コインのトレーダーコミュニティでは、「デフォルト9・26・52は6日週前提だから今の24/7市場ではズレがあるのでは?」との議論から代替設定が広まっていますcoinmarketcap.comcoinmarketcap.com。
- 代表的な代替例:10・30・60: 多くの暗号資産トレーダーが推奨するのが**「10・30・60」という設定ですcoinmarketcap.comacademy.binance.com。これは9→10(日)、26→30、52→60**と若干長めに変更したもので、7日間フル稼働の週に対応させる意図がありますcoinmarketcap.comacademy.binance.com。具体的には、10日≈1.5週間(7日週×~1.5)、30日≈1か月(30日=約4週間強)、60日≈2か月といった感覚になります。週末の値動きを平滑化し、連休なしの連続相場によるボラティリティを吸収する狙いがありますdelta.exchangechartswatcher.com。実際、CoinMarketCapの解説でも「暗号資産トレーダーの多くがオリジナルではなく(10, 30, 60)を使っている」と紹介されていますcoinmarketcap.com。
- さらに長期の例:20・60・120: 一部の分析者はより騙しを減らす目的で期間を倍加した**「20・60・120」**を提唱していますacademy.binance.com。Binance Academyによれば、「(10,30,60)に加えて、さらにそれを倍にして(20,60,120)を使う人もいる」とのことですacademy.binance.com。20日を短期、60日を中期、120日を長期とすることで、短期的なノイズを大幅カットし、中長期トレンドの把握に徹する設定ですacademy.binance.com。特に出来高が薄いアルトコインなどではデフォルトだと頻繁に雲抜け・クロスのシグナルが出すぎるため、あえて鈍感にして大きな波のみ捉えようという発想です。
- 標準値派の存在: もっとも、暗号資産でも標準の9・26・52派は依然存在します。理由は「他の市場参加者と同じチャートを見たい」「設定をいじると一目均衡表本来のバランスが崩れる可能性がある」などですacademy.binance.com。実際、海外フォーラムでも設定変更の有効性は賛否両論で、「調整すべき」の声と「標準を崩すべきでない」との声がぶつかり合っていますacademy.binance.com。例えばBinanceの解説では「設定変更することの効率性には議論の余地がある。調整すべきとの意見もあれば、標準設定を捨てることはシステムの均衡を乱し無効なシグナルを量産すると主張する向きもある」と紹介されていますacademy.binance.com。
設定差がもたらすシグナルの違い
- 短期設定(例: 7・22・44)
- シグナルは早いが騙しが増加。
- 雲が薄く、クロスや三役好転が頻発する。
- 標準設定(9・26・52)
- 世界的に共有され、自fulfilling効果。
- 最も多くの投資家が参照。
- 長期設定(10・30・60や20・60・120)
- シグナルは遅いが信頼度が高い。
- 騙しを減らし、大局観に強い。
ベンチマーク比較:標準 vs 代替設定のケーススタディ
ここでは代表的な銘柄に対し、標準設定と代替設定でどのようにシグナルの出方が異なるかを簡易に比較してみます。バックテストほど厳密ではありませんが、ケーススタディとして参考にしてください。
- ケース1: 米国株指数(S&P500)日足, 2020年コロナ後の上昇局面
*標準(9,26,52)*では2020年4月中旬に三役好転シグナル(価格が雲上、転換線>基準線、遅行スパン強気)が点灯しました。一方、*短期設定(7,22,44)*ではこれが約1週間早く3月末に点灯しています。短期設定のおかげで初動から乗れた反面、その直後に一旦基準線割れのダマシ下落も発生し、一目単独では振り落とされた可能性があります。標準設定はシグナル発生が遅れましたが、その分押し目ノイズに反応せず安定してトレンドフォローできています。結果的に両者とも主要な上昇トレンドは捉えましたが、トレード回数は短期設定の方が多く、利益機会と同時に調整局面での往復ビンタも増えました。 - ケース2: USD/JPY日足, 2022年前半の急騰局面
この期間、ドル円は歴史的な円安トレンドとなりました。*標準(9,26,52)*では2022年2月頃から雲上を走り続け、遅行スパンも常に強気、基準線が有効な押し目支持となって機能しました。一度も三役逆転せず約半年で20円以上上昇する教科書的なトレンドでした。*長期設定(20,60,120)*で見ると、転換線・基準線がかなり離れており、押し目らしい押し目がなく常に転換線>基準線の状態が続きました。エントリー判断としては標準でも十分早かったですが、長期設定ではより遅行スパンが安心感を持って順行状態となり、ポジションホールドを継続しやすかったでしょう。しかし仮に途中で相場が失速した場合、長期設定だとクロスや雲割れが遅れて利益の手仕舞いシグナルが遅延するリスクも孕んでいました。このケースはトレンドが非常に強かったため、どの設定でも大差なく利益を得られたはずですが、トレンドフォロー継続のメンタル面では長期設定が有利に働いたかもしれません。 - ケース3: ビットコイン日足, 2021年後半〜2022年の下落相場
暗号資産市場の検証です。*標準(9,26,52)*では2021年末の600万円台から価格が基準線割れ・雲割れし、遅行スパンも弱気に転じた三役逆転が2022年1月頃に点灯しました。その後リバウンド局面で何度か基準線を上抜く騙しがありつつ、結局トレンドは変わらず下落継続となりました。*代替(10,30,60)*では、強気転換シグナルがより出にくくなった分、リバウンド局面のシグナルはほとんど点灯せずに済み、下落トレンド継続を冷静に判断できたと言えます。つまり弱気相場でのノイズ除去には(10,30,60)が有効だった例です。ただ、その代わり底打ち後に反発へ転じる場面では標準設定より復帰シグナルが遅れて、上昇初期のエントリーチャンスを逃しやすかったという側面もあります。このように暗号資産では騙しの多い相場=長期設定有利、転換点の鋭い相場=短期設定有利と、一長一短がはっきり現れました。
以上のケーススタディからも分かるように、標準 vs カスタム設定はトレードオフの関係にあります。どちらが常に優れるというものではなく、相場環境や戦略次第で結果が変わります。したがって実務では複数設定で検証し、自分の許容度や市場特性にあったものを選ぶことが大切です。可能なら同時に2種類の一目を表示してみて、両方のシグナルが重なる場面だけエントリーするといった応用も考えられます。
実務ガイドライン(2023–2025年最新動向)
- 株式・FX:基本は標準値。大衆が同じ線を見るからこそ機能。
- 暗号資産:標準+(10・30・60)を並行表示する実務家が増加中。
- 週足:日足と同じ設定で統一するのが主流。
- ツールのデフォルト(TradingView/MT4/Bloomberg等):いずれも9・26・52【TradingView Help】。
結論と実務ガイドライン
最後に、本記事の知見を踏まえて**「どの市場で日足・週足にどの設定を使うべきか」**判断するためのフローチャートと、設定変更時の注意点をまとめます。
- 基本はデフォルト: まず最初は9・26・52でチャートを分析してくださいmag.minkabu.jp。この標準設定こそが一目均衡表本来の姿であり、広く利用されることで機能する側面がありますoanda.jp。どの市場であっても、初めはこの設定を出発点にするのが無難です。
- 市場特性を考慮: 次に自分が扱う市場の特性を確認します。
- 取引日数: 週5日か週7日か(例: 日本株・FXは24/5、暗号資産は24/7)。
- ボラティリティ: 値動きの荒さ(例: 株式個別銘柄やアルトコインは荒く、主要株指数やG10通貨は比較的安定)。
- トレンドの持続性: トレンドが出やすいかレンジが多いか。
- 実例・エビデンスの収集: 可能であればその市場の過去データで標準 vs 候補設定を比較してみましょう。過去チャートを目視でなぞり、主要なトレンド転換点でどちらが有効だったか(騙しはどちらが少なかったか)を確認します。既存の文献や有識者コメントも参考になります。academy.binance.com
- 代替設定の採用判断: 比較の結果、「代替設定の方が明らかに優位」と思えたら採用を検討します。ただしその変更が他者との認識ズレを生まないか注意しましょう。例えば自分だけ13日基準線を使っても、多数派が26日基準線を見ているなら、マーケットでは26日線で反応が起きます。このジレンマに対しては、自分用にはカスタムでも、他人も見る標準の位置も常に意識するという折衷も必要です。
- マルチタイムフレームとの整合: エントリーと別の時間軸でトレンド判断をする場合、両方で辻褄の合う設定にします。基本は全て同じ設定値で統一ですfu.minkabu.jp。異なる設定を混在させると解釈が複雑化するため避けます。
- 実戦テストと微調整: 実際のトレードでしばらく運用してみて、過度なシグナルやストレスがないか検証します。例えば「この設定だとエントリーチャンスが少なすぎる」「騙し勝ちで負けが込む」などあれば、再度期間を見直すか標準に戻す決断をします。その際、一度に大きく数値を変えず段階的に調整すると良いでしょう(例: 26→22→20と徐々に試す)。
- 他手法とのバランス: 一目均衡表だけに頼らず、他の指標や裁量判断も組み合わせて総合的に判断しますphemex.com。期間設定に固執するより、他の要素で補完できれば無理に変える必要はありません。
設定変更時のチェックリスト
- ✅ 意味合いを崩していないか: 一目均衡表の各線は相場のセンターを示す重要な役割がありますoanda.jp。極端に短期化・長期化すると「半値線」としての意味が薄れる恐れがあります。変更後も転換線=短期レンジの中心、基準線=中期レンジの中心という関係が直観的に掴めるか確認しましょう。
- ✅ 他者がどう見ているか: 市場の主要参加者(機関投資家や有名トレーダー)が何を使っているか情報収集しましょう。自分だけ特殊設定にして孤立しないように。oanda.jp
- ✅ シグナル頻度と精度のバランス: 過去チャートで売買シグナル(TKクロスや雲抜け)が出たポイントを標準と比較し、頻度と勝率をざっくり比べます。設定変更で勝率向上が頻度減少に見合わないなら採用見送りですacademy.binance.com。
- ✅ パラメータ比の維持: 一目均衡表の期間比率(9:26:52)にはある程度意味があると考える人もいます。そのため単に全て倍にする/半分にする程度に留め、極端な比率変更(例: 9・100・200のような)にならないよう注意します。一般にはTenkan:Kijun:SenkouB ≈ 1:3:6の比率内で動かす程度が現実的です。
- ✅ 検証期間の充分さ: できれば数十〜百以上の売買サイクルをデータで検証します。特に暗号資産など新しい市場はデータが浅いので注意が必要です。
- ✅ ソフトの設定ミス防止: プラットフォームによっては遅行スパンのシフトを手動設定しなければならない場合があります。設定値の入力ミスで意図しない挙動になっていないか確認しましょうfu.minkabu.jp。海外製ツールでは一目の計算実装自体が誤っている例も稀に報告されていますfu.minkabu.jp。
- ✅ 自分のメンタル・戦略との相性: トレンドフォロー型の人は多少鈍感な設定でも利益を伸ばす方が向くかもしれません。逆に回転売買主体の人は敏感な設定で初動を逃さない方が良いでしょう。このトレードスタイルとの適合も見極めます。
以上のガイドラインに従って期間設定を決定すれば、大きく道を踏み外すことはないでしょう。重要なのは、一目均衡表自体が完璧な予報装置ではなく、相場解釈の助けにすぎないという点ですphemex.com。設定値もそれを支える一要素に過ぎません。むしろ一目均衡表の本質である時間論・波動論・値幅観測などに立ち戻り、**「なぜその期間なのか」**を考える姿勢が本当の上達につながるはずです。
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