米8月雇用統計は市場予想を大きく下回り、過去データも下方修正されました。これにより米景気減速が鮮明となり、FRBの年内利下げ再開観測が強まっています。9月会合での25bp利下げは「ほぼ確実」との見方が優勢ですが、市場はすでに複数回の利下げを織り込んでおり、単純に株高・ドル安につながる局面ではなくなっています。
専門家の見解では、株式市場はAI投資を背景に底堅さを維持しており、為替や金利との連動性は2023年半ば以降やや崩れているとの指摘もあります。米長期金利は低下方向ながら大幅な下抜けは想定しにくく、株式市場は年末にかけ一時的な調整を挟みつつも、中期的には業績とAI需要が下支えする見通しです。
目次
主要経済指標の結果と市場の受け止め
米8月雇用統計
- 非農業部門雇用者数は予想を大幅に下回り、6月分は増加から減少に修正
- 失業率は2021年10月以来の水準に上昇
→ 景気悪化の転換点になる可能性あり。中小企業の雇用悪化懸念も強まっています。
→ 利下げは9月にほぼ確実、年内3回の利下げを見込む見方も浮上。
今週の米物価指標
- **8月PPI(10日)、CPI(11日)**がFOMC判断に直結
- CPIは関税転嫁で一時的に加速の可能性がある一方、サービス価格の鈍化要因もあり
- FRBはまず25bp利下げで様子見と予想
為替・金利の展望
- 為替は「米雇用の弱さによるドル安圧力」と「国内政治不透明感による円安圧力」が拮抗
- FRB利下げ・日銀利上げ再開は円高要因ですが、金利差とドル円の連動性は低下傾向
- 実際には株式市場のリスク選好が為替を左右しやすい局面
- 米長期金利は低下方向でも下値は限定的 → 円高は市場予想ほど進みにくい
日本の政治情勢と市場インプリケーション
石破総理が辞任を表明し、自民党は総裁選に突入しました。候補者の推薦人確保が焦点であり、世論調査では高市氏と小泉氏の支持が拮抗。投開票は10月上旬見通しです。
市場影響としては、
- 政局不透明感の後退 → 株式市場の支え
- 財政政策期待 → 景気押し上げ要因
- 一方で、長期・超長期金利には財政リスクプレミアムが意識されやすく、為替市場にも波及の可能性あり
株式市場の見通し(テーマ:高配当×ベータ)
- 9月は中間配当の権利取り月 → 高配当銘柄に資金が集まりやすい
- 権利落ち後の株価変動には注意が必要
- 指数が上昇基調にある場合、ベータの高い高配当株は相対的に良好なパフォーマンスを示しやすい
- 選定条件:
- 配当利回りの高さ
- 財務健全性
- 流動性
企業トピックス・決算関連
- ブロードコム:AI関連の大型受注を背景に株価急騰、半導体セクターの牽引役
- テスラ:マスクCEOの巨額報酬案を11月総会で諮問、自動運転タクシー事業や時価総額目標と連動
- グーグル:EU競争法違反で制裁金見通し
- 伊藤忠商事:国内初の「オレンジボンド」発行。女性活躍推進資金に限定、ESG投資の需要を示す事例
リスク・シナリオと留意点
- 米労働市場の弱さ拡大 vs AI投資による景気下支え
- 労働参加率低下・雇用新陳代謝鈍化 → 賃金・物価に粘着性、潜在成長率の抑制要因
- 関税転嫁による物価押し上げは2025年春頃まで続く見込み
- 国内は政局不透明感と財政懸念が併存 → 長期金利・為替市場のボラティリティ要因
まとめ
米雇用統計の悪化で利下げはほぼ確実となりましたが、その回数やペースには不確実性が残ります。株式市場はAI需要を背景に中期的な強さを保ちつつ、為替は金利差よりもリスクセンチメントに左右されやすい局面です。
一方、国内では石破総理の辞任を受けた総裁選が、政策期待と財政懸念を同時に生み出し、市場に影響を与える構図となっています。今後の注目は 米CPI/PPI と 自民党総裁選の行方 です。
