米国では「雇用の減速」→「利下げ観測の前倒し」という流れが優勢になる一方、今週のCPI・PPIがコア物価の粘着性を示せば、0.5%利下げ観測は後退しかねない—という“二段構え”の相場観が共有されています。米長期金利は雇用統計後に低下しましたが、背景には年金資金のALM(資産負債管理)に伴う長期債需要、MMFからの資金シフト余地といった構造的な買い需要があるとの解説でした。国内では与党総裁選の顔ぶれが固まりつつあり、政策継続性への期待は日本株の支え。ただし可熱感・不透明感から上値は重くなりやすいとの見方です。
現在の経済の見方と今後のマーケット展望
■米国金融政策のシナリオ
- 弱い雇用統計を受け「9月利下げは既定路線」という見方が市場コンセンサスに。
- 0.25%×複数回、または9月に0.5%の可能性まで意識。
- ただし、CPI/PPIが+0.3%前後の伸びを示し、コア物価が上振れすれば「0.5%利下げ観測」は弱まる可能性。
- 雇用統計の年次ベンチマーク改定で▲80万~▲100万人規模の下方修正見込み。ただし古いデータのため、政策判断への影響は限定的。
■金利・債券需給の見取り図
- 国債・社債の大量発行下でも投資家需要が追いつき、需給は安定。
- MMFから長期債へのシフト余地あり。年金マネーの長期ゾーン流入も続く見通し。
- 30年金利:5.0~5.1%が上限目線、10年金利:4.33~4.6%程度が上限レンジ。
■為替・日本株の視点
- ドル円は利下げ観測次第で上値の重さ。145円割れも視野。
- 日本株は米利下げ期待と政局期待で支えられる一方、4万4千円近辺では可熱感から伸び悩みやすい。
■政策・政治リスク
- 米政権のFRB人事・関税政策を巡る不確実性はインフレ再燃リスク。
- 国内では総裁選が進展し、政策継続を好感しつつも結果確定までは思惑先行の値動きに。
特集ニュースの要点
■量子コンピューティング
AI・半導体に続くテーマとして量子計算に注目。D-WaveやIonQなどが取り上げられ、収益化の見通しは5年以内との期待も。
■データセンター×ESG
AIの電力需要は検索の10倍規模。冷却・クリーン電源関連企業に注目。
■IPO環境の回復
2025年の米IPO市場は前年並み、21年以来の好調。クオリティ回復が特徴。
経済指標の結果と受け止め
- NY連銀「消費者予想調査」:雇用は弱含み、インフレ期待は粘着。
- ISM製造業:仕入価格は低下基調。サービス価格や新車価格がCPI押し上げ要因。
- 雇用ベンチマーク改定:過去1年の雇用者数は大幅下方修正見込み。
企業・セクター動向
- 半導体:ブロードコム、マーベルが成長牽引。AI需要に伴う冷却・電力コストが課題。
- データセンター設備:バーティブの受注残が増加基調。
- 再エネ:ネクステラはデータセンター向けクリーン電力で注目。
- アップル:新型iPhone発表控え、AI機能・関税コストに懸念。
- EV市場:テスラのシェア低下。競争激化と補助金政策が焦点。
投資家向けポイント
- CPI/PPI次第で利下げ幅のシナリオ分岐。
- 長期債は需給支持が強く、金利上振れは限定的。
- AI投資のボトルネック解消(省電力半導体・冷却・再エネ)が注目テーマ。
- 量子コンピューティングは中期テーマだがボラ高。段階的投資が無難。
- IPOは「量より質」。初値急騰後の反動に注意。
まとめ
米景気は「雇用減速×消費底堅さ」のミックス。
債券は年金・MMF需要に支えられ、金利の上振れは限定。
株式は政局・イベント前後で振れやすく、電力効率関連に資金が集まりやすい。
量子計算・高効率データセンター・高品質IPOは中期テーマだが収益化タイミングとボラには注意。
