2025年9月30日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年9月30日|経済の見方と今後のマーケット展望

1. いまの経済の見方と今後のマーケット展望

米国では、政府機関の一部閉鎖リスクがくすぶるなか、株式市場は「上値を試しづらいが押し目は厚い」地合いが続いています。背景には、個人投資家・機関投資家の待機資金(米MMF残高)と、企業の潤沢なフリーキャッシュフローという二つの“受け皿”が意識されています。MMF残高は高金利を追い風に過去最高圏。今後、残高が減少に転じるなら一部が株式へ還流し上昇エネルギーになりうる、との見立てです。また米ハイテク企業のフリーキャッシュフローは過去最高規模に積み上がっており、株価の一時調整局面では自社株買いなど需給の下支えが働きやすいとの指摘がありました。

一方、コモディティでは、原油は11月の増産観測で軟化、金は「米政府閉鎖」への警戒とドル安気味の流れを受けて続伸しました。安全資産選好が強まりやすい局面で、金は最高値更新基調との整理です。

為替は米雇用・物価イベントを前に神経質。米失業保険や週次統計は大勢に変化はなく、強い・弱い材料が混在するなかで方向感を測りづらいとの見方が出ています。

国内株式については、足元でMBOやTOBの増加が指数全体の底上げ要因になっている点が強調されました。買付価格は一般にプレミアムが乗るため対象銘柄の株価押し上げに直結し、換金を受けた資金の“乗り換え需要”が他銘柄にも波及します。加えて、空売り勢にとってはギャップリスクが高まるため短期的に売り持ちを作りにくく、相場全体の下支えとなる、というメカニズムです。具体例として、NTTデータのTOBでは買付価格が直前株価比で35%上乗せされ、指数寄与も確認されています。

中国株は、上海総合が約10年ぶりの高値圏で「4000ポイントの壁」を試す展開。ただしバリュエーション上限(PER16倍近辺)への接近、五中全会(今後5か年計画の方針提示)前後の様子見、当局の過熱抑制警戒といった“頭打ち要因”も意識され、年内に4000到達はあっても明確な上抜けは容易でないとの分析が提示されました。 また、AI・半導体を軸にした「政策×国策企業支援」の追い風は続く一方、海外規制の影響でNVIDIA依存が低下し国産化シフトが強まる構図も指摘されています。

米個人消費は、8月の支出が3か月連続増と底堅さを見せる一方、ミシガン大学の消費者態度指数は低下し、インフレによる心理的な重さも残ります。年末商戦の先取り行動が強まり、ハロウィーン関連支出は過去最高見込みとのサーベイが紹介されました。若年層を中心に早期購入で“直前の衝動買い”を避け、ディスカウントストアの利用が増えるなど、賢い消費へのシフトが見られます。


2. 特集トピックの要点

(1)ふるさと納税「ポイント付与」禁止と楽天の提訴
総務省は10月1日から、ポータルサイト各社の独自ポイント付与を全面禁止。過度な返礼競争で本来の趣旨が損なわれ、自治体歳入の目減りにつながるとの懸念が理由です。これに対し楽天は、従来からの同社ポイントプログラムであり、過熱時には上限設定など別手段があり得たとして「過度な規制」と主張。自治体側は利便性向上や事務負担軽減など、プラットフォームの正の効果も評価しており、制度変更が寄附額の伸び(5年連続更新)に与える影響が焦点です。

(2)中国:上海総合「4000の壁」—天井か通過点か
10月は国内の五中全会と、対外的にはAPEC絡みの米中要人接触が視野。イベント前後は警戒感が高まりやすく、8月の主要マクロ(鉱工業+5.2%、小売+3.4%、固定資産投資+0.5%)は「改善しつつも強さは限定的」という評価です。10年前の急騰・急落局面と比べ、今回は大型株主導で上昇率はより抑制的。相場の質は改善しつつも、年内は高値圏でのもみ合いシナリオがメインに据えられています。

(3)ブラジル・インド:高関税の波紋
ブラジル向けの高関税方針の背景には、対BRICS政策や国内政治(ボルソナロ氏を巡る対立)への強硬姿勢があるとの解説。マクロへの直接インパクトは限定的としつつ、米中対立の“踏み絵化”が市場に波及するリスクは残ります。インドに対してはロシア産原油輸入の扱いと農産品の通商交渉が難所。与党BJPが議会勢力を落とすなか、農業分野の譲歩は内政リスクが大きく「石油と農業は譲れない」構図が続く見通しです。


3. 直近の経済指標と市場の受け止め

米・ダラス連銀製造業景況感(9月)
総合は▲8.7と2か月連続悪化。生産・新受注・雇用はいずれも前月から低下し、コスト上昇と販売価格の伸び悩みの“利ざや圧迫”がにじみます。

米個人消費・消費マインド
支出は増勢維持の一方、消費者心理はインフレ圧力を意識。年末に向け「早め・賢く買う」行動が広がるとのサイン。

先行イベント
JOLTSや雇用統計(10/3)の結果次第で、FRBの利下げペース期待が再調整される公算。労働需給の冷え具合を見極める局面にあります。


4. 企業・金融トピックの整理

  • Electronic Arts(EA):投資ファンド連合によるLBO(非公開化)計画を発表。来年4~6月の完了を目指す大型案件で、年内外のM&A・LBO環境の注目度を高めています。
  • ファースト・ブランズ・グループ:米破産法11条申請。信用力の低い企業向け融資で延滞増加の指摘もあり、ハイイールド周辺の資金繰り不安が一部で表面化。
  • 朝日グループHD:サイバー攻撃に伴うシステム障害で、飲料・酒類の出荷・配送が停止。個人情報流出は確認されていないものの、供給網への影響が課題。
  • 日産自動車:横浜F・マリノス運営会社の株式売却を検討。ブランド・地域連携の在り方を含め、資本政策の再構築がテーマに。
  • 地銀再編:千葉銀と千葉興銀が2027年4月に持株会社設立で統合へ。総資産25兆円規模、地域金融の効率化と競争力強化を目指す動き。

5. 投資家の視点(専門家の解説の要旨)

  • グローバル:米国は“待機資金×自社株買い余力”という二つのクッションで急落耐性が高まる一方、政府閉鎖や労働・物価データのブレに左右されやすい状態。コモディティは原油軟化・金高の組み合わせで、ディフェンシブ性が相対的に意識されやすい。
  • 日本:MBO・TOBの増勢は、対象外の広範銘柄にも需給改善を波及。イベントドリブン×インデックス寄与の二重効果に注目。
  • 中国:政策期待と高バリュエーションの綱引き。AI・半導体の国産化がテーマ性を支える一方、当局の過熱警戒やイベント前の様子見で上値は重くなりやすい。

まとめ

当面の鍵は「米雇用・物価→FRBペース見通し」と「政策イベント(中国五中全会、米中接触)」。日本株はイベント要因(MBO/TOB、スピンオフ等)と外部リスクのはざまで、押し目の選別が主戦略になりそうです。消費は“量は堅いが財布の紐は固く賢く”という二面性。年末に向け、ディスカウント業態や体験型需要(イベント消費)での明暗が分かれる公算が高いと考えます。

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