2025年10月10日|経済の見方と今後のマーケット展望

2025年10月10日|経済の見方と今後のマーケット展望
目次

総括:相場上昇の“質”と持続性を点検

米株は高値圏で一服しつつも、決算シーズン入りで「企業の実力」が試される局面に入りました。消費や投資の強さは局所的に確認できる一方、金・銀など安全資産も並行して買われており、投資家はリスク管理を意識した分散姿勢を強めています。FRB高官の発言や米政府機関の一部閉鎖(データ遅延)など政策・統計面の不確実性も残るなか、決算の質とガイダンス、そしてインフレ・金利の“次の方向”が年末相場を左右しそうです。


1)現在の経済の見方・今後のマーケット展望

米国:リスク選好と安全志向が同居

ニューヨーク市場は、好決算の初弾が支えた楽観と、利益確定や長期国債入札の弱さがぶつかり一進一退。並行して銀の現物が1980年以来の大台を試すなど貴金属の強さが目立ちます。株と金が同時に上昇する近時のパターンは、ITバブル期などの「株だけが独走した」局面と異なり、投資家がインフレや政策の不確実性に備えて分散しているサインと解説されました。

FRBでは、NY連銀のウィリアムズ総裁が年内の追加利下げ支持に言及。関税がインフレに与える影響は想定より小さく、むしろ労働市場の減速リスクを重視する姿勢を示しました。政府機関の一部閉鎖で公的統計の公表が遅れても、民間データで動向把握は可能との見方です。政策は「利下げ方向」への地合いをにじませつつ、データの欠落が市場の不確実性を高める点には注意が必要です。

日本:上昇の牽引役はAI・円安恩恵、広がりは課題

日経平均は最高値更新の流れの中で、寄与度の高い大型AI半導体関連や円安メリット銘柄が相場を押し上げている一方、値下がり銘柄も相応に存在。上昇の「幅広さ」にやや物足りなさが残るという指摘がありました。もっとも、日米の金融政策スタンスや企業業績期待が崩れなければ、年内に5万円台の試しも視野という見通しです。

為替は「高市トレード」による円安進行を背景にしつつも、物価高対策や日銀との政策整合、今後の利上げ可能性への思惑などを織り交ぜながら、過度な円安の抑制シナリオにも言及がありました。短期的な一方向のトレンドには慎重さが必要です。


2)特集ニュースの要点

貴金属の存在感:銀は45年ぶり水準、金は株と並走

銀の現物価格が一時「1トロイオンス50ドル」の大台に乗せ、1980年以来の水準に。金に続く牽引役との見方が広がりました。金については、年初来の上昇率が株式主要指数を上回るペースという指摘も。株と金が同時に上がる構図は、投資家がリスクを取りつつもヘッジを厚めに積む現在の地合いを象徴します。

テック・自動車:FSDへの監督強化

米道路交通安全局(NHTSA)がテスラのFSD(高度運転支援)で58件の不安全挙動を把握、対象は約288万台とする新たな調査を進めているとの報道。自動運転の商用化に対する規制の視線は一段と厳格化へ。テック主導の成長期待が強い相場に、規制面の不確実性という“もう一つのリスク”を突きつける材料です。

資源・サプライチェーン:レアアース

中国の輸出規制強化観測を受け、米国のレアアース関連が一斉高。供給網の地政学リスクが再燃すれば、素材・半導体・EVなど広範な産業のコストや投資計画に波及し得ます。中長期では、米国内供給網強化に資本が向かいやすい地合いも意識されます。


3)発表済み・注目の経済指標と市場の受け止め

  • 米国:政府機関の一部閉鎖により統計公表の遅延が発生。ただしFRB要人は民間データで雇用・物価動向の把握は可能と説明。市場は「データ空白」を警戒しつつも、年内の追加利下げ支持発言が金利低下観測を支えています。
  • 米消費者マインド:ミシガン大指数(速報)への注目が指摘され、政府閉鎖でCPIの公表に支障が出る場合の手掛かりとして位置づけられました。期待インフレ率のブレ次第で利下げシナリオの持続性が試されます。
  • 日本:本日は**国内企業物価指数(PPI)**が焦点。企業間取引価格の動きは、家計に波及する消費者物価の先行指標として注目され、日銀の政策運営を占う材料になります。

4)企業の決算・業績アップデート

米国(7–9月期の皮切り)

  • デルタ航空(DAL):増収増益。プレミアム需要が業績をけん引し、EPSは市場予想を上回りました。通期EPSは従来予想の上限程度との見通し。政府閉鎖の影響は「現時点でなし」とCEO。旅行・出張の質的回復が続くかが焦点です。
  • ペプシコ(PEP):北米飲料の回復で売上・EPSが予想超え。コスト高と値上げのバランス、ボリューム回復の持続性が次の論点。

日本・小売/外食

  • セブン&アイHD:中間期は増益ながら、国内コンビニの鈍さを映し通期の営業利益見通しを下方修正。物価高による節約志向への対応、商品力と来店動機の再設計が課題です。
  • ファーストリテイリング:通期は2桁増益。国内売上はアパレルとして初の1兆円超え。もっとも、円安や人件費・物流費の上昇を踏まえ、価格の適正化を進める方針を示唆。グレーターチャイナの構造改革が収益率改善の鍵。ユニクロ偏重からの**ブランドポートフォリオ再強化(GU改革など)**も並行課題です。

5)政策・為替:新政権の経済運営と市場の視線

自民党・高市総裁は政府・日銀の2013年アコードの直ちの見直しは不要との認識を表明しつつ、行き過ぎた円安を招く意図はないと発言。市場は、物価高対策との整合や日銀との政策対話、必要に応じた利上げ容認の可能性など“円安の臨界点”を探る局面にあります。政権の骨格固めが遅れれば期待とのギャップが相場のボラティリティを高めるリスクも。


6)専門家の解説(要旨)

  • 米国ストラテジー:株と金が同時に上がる局面は、投資家がインフレ・政策・地政学を織り込みながら分散を厚くしている証左。AI投資ブームの継続性は「今季決算の中身」で見極めたい。
  • 日本株見通し:足元の上昇はAI・円安恩恵の局所性が強い。広がりに欠ける一方、政策・業績期待が不変なら年末にかけて一段高の可能性も。
  • 為替:高市トレードによる円安は、物価対策・日銀との整合・米利下げ観測などが交錯する“期待と警戒のバランス”上にあり、過度な円安は抑制され得る。足元はPPIなど物価先行指標がカギ。

7)投資家が押さえるべきチェックリスト

  1. 米主要企業の決算:AI投資の持続、ROAI(AI投資の収益化)の言及、マージンの耐性。初弾のデルタ・ペプシは堅調スタート。
  2. 政策・金利:ウィリアムズ総裁の「年内追加利下げ支持」発言の波及。公的統計の遅延下での市場センチメント。
  3. コモディティ:金・銀高の意味合い(“守り”の厚み)。原油の低位安定観測の変化点。
  4. 日本株の広がり:寄与度偏重からの裾野拡大が実現するか。ポートフォリオの分散・利確ルールの明確化。
  5. 為替と物価:PPI→CPIへの波及、円安の臨界点、価格転嫁の進み具合。

まとめ

米国は分散を意識した強気、日本はテーマ偏重の強気という色合いの違いが見えます。年末にかけては、(1)米決算の質、(2)FRBの利下げペースとデータ遅延の扱い、(3)日本の政策運営と物価対応、(4)コモディティ動向、の四点が相場の“質と持続性”を決めます。上がる局面でも守りを同時に厚くするのが現在の勝ち筋。テーマに偏らない分散と、決算ファクトの検証を軸にしたメリハリのあるリスク管理が有効です。

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