著者である佐々木英信氏は、本書を執筆した動機として、1990年頃から株式業界紙や経済誌で一目均衡表に関する解説が増えたものの、その多くが内容を単純化し、あたかも方程式のように相場を断定的に語る風潮に危機感を抱いたことを挙げています。これは、一目均衡表の創始者である一目山人翁が最も懸念していたことであり、師の「他人の解説を鵜呑みにしてはならない」という教えに反する動きでした。
本書では、一目均衡表の真髄について以下のように解説されています。
• 三大骨子と総合化の重要性: 一目均衡表は、単に転換線や基準線の交差(三役好転など)だけで判断するものではありません。時間論、波動論、値幅観測論の三大骨子を総合的に探求し、「相場の現在性(相場が今持っている力)」を把握することが本質です。特に、師が最も力説したのは**「時間こそが相場そのものである」**という時間論の概念です。
• 哲学的背景: 一目均衡表は、仏教精神に根差した**「自力本願」「自助努力」を重視しています。他人の言説に頼る「他力本願」では、利益が出ても損失が出ても真の理解にはつながらず、相場観が身につかないと戒めています。また、「単純なものの中に真理は在る」という考えから計算は極めてシンプルにされており、相場の急変時にも即座に判断できる実用性を重視しています。さらに、思い込みを生みやすい「予想」ではなく、客観的な証拠に基づく「予測」**を行うことの重要性も説かれています。
• 本書の目的: この本は、一目均衡表が持つ奥深い内容の一端に触れてもらうための基礎編として書かれています。著者は、優れた理論であるにもかかわらず、読み手によって解釈に大きな差が生まれることを指摘しています。もし均衡表を用いた見通しが外れた場合、それは均衡表が間違っているのではなく**「均衡表の読み手が間違った」のであり、そうした誤解を解くことも本書の目的です。最終的に、この本は原著である『一目均衡表』への誘い**であり、真の実力を養うためには自ら原著を手に取り、学びを深めることを強く推奨しています。
これまで解説書が出版されなかった理由
一目均衡表の創案者である一目山人(本名:細田悟一)は、自身の理論が公式のように捉えられ、十分な学習を経ずに売買に活用されることを非常に恐れていました。そのため、原著である7部作は教科書のような形式ではなく、「相場と照らし合わせながら本を読み、予測と検証を繰り返すことで自然に相場を読み取れるようになる」という信念のもとに書かれています。
このような背景から、これまで解説書の出版依頼は固く断られてきました。その理由は主に以下の2点です。
• 一目山人以上の解説者がいないこと。
• 解説書が一目均衡表の概念を固定化してしまうことへの懸念。
本書の出版が認められた経緯
今回、例外的に本書の出版が認められたのには二つの理由があります。
1. 一目山人が亡くなり、一目均衡表を用いて相場を的確に解説する者がいない現在、原著を研究するための手引きとなる解説書が必要になったこと。
2. 著者の佐々木英信氏が長年にわたり均衡表の研究を続け、原著に対する深い洞察力を持っているため、均衡表を誤った方向に導くことはないだろうという信頼があったこと。
読者への注意と本書の役割
解説書の出版には依然として危惧が残っています。そのため、読者、特に一目均衡表を初めて知る方々には以下の点が強く求められています。
• 本書の内容を「そのまま受け取る」のではなく、また「すぐに売買に活用しない」こと。
著者の佐々木氏は優れた相場観で高く評価されており、本書が読者にとって大きな利益となることは間違いないとされています。しかし、あくまで本書は原著への手引きであり、原著である一目均衡表7部作はさらに素晴らしいものであるということを知ってほしいと述べられています。最終的に、読者が均衡表を深く理解し、それによって相場を的確かつ理論的に理解されることが願われています。
目次
はじめに … p.0
「一目均衡表の研究」の出版にあたって … p.9
第1章 一目均衡表の世界 … p.17
- 第1講 一目均衡表の世界 … p.18
- 第2講 一目均衡表の作図 … p.21
- 第3講 波動論(抜粋) … p.24
- 第4講 値幅観測論(抜粋) … p.27
- 第5講 転換線と基準線① … p.30
- 第6講 転換線と基準線② … p.32
- 第7講 基準線の方向、抵抗帯 … p.34
- 第8講 遅行スパンと実線、先行スパン … p.36
第2章 時間論 … p.39
- 第9講 時間論とその検証① … p.40
- 第10講 時間論とその検証② … p.42
- 第11講 時間論とその検証③ … p.44
- 第12講 時間論とその検証④ … p.46
- 第13講 時間論とその検証⑤ … p.48
- 第14講 簡単明瞭が最良 … p.50
第3章 波動論 … p.53
- 第15講 波動論① … p.54
- 第16講 波動論② … p.56
- 第17講 波動論③ … p.58
- 第18講 波動論④ … p.60
- 第19講 波動論⑤ … p.62
- 第20講 波動論⑥ … p.64
第4章 値幅観測論 … p.67
- 第21講 値幅観測論① … p.68
- 第22講 値幅観測論② … p.70
- 第23講 値幅観測論③ … p.73
- 第24講 値幅観測法の実例① … p.76
- 第25講 値幅観測法の実例② … p.78
- 第26講 値幅観測法の実例③ … p.81
- 第27講 値幅観測法の実例④ … p.84
第5章 三大骨子の総合化 … p.87
- 第28講 三大骨子の総合化① … p.88
- 第29講 三大骨子の総合化② … p.90
- 第30講 三大骨子の総合化③ … p.93
- 第31講 三大骨子の総合化④ … p.96
第6章 型譜について … p.99
- 第32講 型譜について① … p.100
- 第33講 型譜について② … p.102
- 第34講 型譜について③ … p.104
- 第35講 型譜について④ … p.106
- 第36講 型譜について⑤ … p.108
- 第37講 型譜について⑥ … p.110
- 第38講 型譜について⑦ … p.113
- 第39講 型譜について⑧ … p.116
- 第40講 型譜について⑨ … p.118
- 第41講 型譜について⑩ … p.120
- 第42講 型譜について⑪ … p.122
- 第43講 型譜について⑫ … p.124
- 第44講 型譜について⑬ … p.126
第7章 週足活用の時間測定について … p.129
- 第45講 週足活用の時間測定について① … p.130
- 第46講 週足活用の時間測定について② … p.132
- 第47講 週足活用の時間測定について③ … p.134
第8章 一目均衡表 総論 … p.137
- 第48講 基本項目の整理① … p.138
- 第49講 基本項目の整理② … p.140
- 第50講 基本数値、時間関係 … p.141
- 第51講 波動構成のまとめ … p.144
- 第52講 値幅観測のまとめ … p.145
- 第53講 均衡表の総合化 … p.146
- 第54講 型譜のまとめ … p.148
資料 … p.151
- 日経平均一目均衡表 1989年 日足 … p.152
- 日経平均一目均衡表 1990年 日足 … p.154
- 日経平均一目均衡表 1991年 日足 … p.156
- 日経平均一目均衡表 1992年 日足 … p.158
- 日経平均一目均衡表 1993年 日足 … p.160
- 日経平均一目均衡表 1994年 日足 … p.162
- 日経平均一目均衡表 1995年 日足 … p.164
- 日経平均一目均衡表 1996年 日足 … p.166
- 週足(84~90年) … p.168
- 週足(90~96年) … p.170
- 日足数値データ … p.172
『一目均衡表』原著のご案内 … p.180
索引 … p.182
